弥生のくせに風当たりは強い。

 

 

家に、ノートパソコンが二台ある。

だがしかしインターネット環境はない。

 

正しく言うと、数年前に契約した無線なんちゃらの

パスワード的な何かが分からなくなってしまい、早二年程。

毎月ひたすら基本料金だけが引き落とされていくのを

「ああ、私の約二時間分のお給料……」と思いながら眺めている。

 

解約なり問い合わせなりすれば良い話なのだけれど

まず何処に連絡すれば良いのかがよく理解ってないもんだから

これはもうどうすることも出来ないんじゃねえかな、と。

 

加えてスマートフォン特有のフリック入力とかいう輩にも

「ちょ、待て!お前、そっちじゃない!一個右!!」なんて

翻弄されているもんだから、自宅では文字を打つ機会がゼロに等しい。

 

小鳥のさえずり的なアレも家ではほとんど開かないし

隣国辺りが発信したメッセンジャーツール的な緑のアレも

私が必死になって可愛いスクールアイドル育成のために

フルコンボを叩き出そうと奮闘している最中に

「そんなもん良いから見ろや!メッセージ来てるで!」と

全力で阻止してくるので年中無休で通知オフ状態だったりする。

 

まあ、昨日は休日だったわけで、本来20代女子というものは

「せっかくの休日だから」と銘打って買い物へ出掛けてみたり

友人と食事をしてみたり飲み会に参加したりするものだと思う。

 

昨日も、家から一歩も出ることなく終わった。

 

朝6時に起床。寝惚けて、横に布団を敷いて寝ている母親を

踏み付けたり蹴飛ばしたりしながらのそのそとトイレへ行く。

そのまま洗面所にある洗濯カゴを引っ掴んで洗濯物を洗濯機へイン。

居間に戻って座椅子に座る、この時点でまだ6時15分。

さて、今日は何をしようかな。と、時計を見ると7時40分。

 

 

……いやね、寝てない。断じて座椅子で転寝とかしてないの。

 

ぼーっと、ただただぼーっとしてるの。

カピバラって見たことあります?多分私、あいつらと同類。

何かを考え込んだりしてたわけでもなくて、無。

精神と時の部屋みたいな場所に行ってるんじゃなかろうかと。

 

で、その部屋でいうと約三週間くらいの修行から戻ったところで

さっき蹴飛ばされてもピクリともしなかった母親が起床して言う。

 

「コーヒー買って来て」

 

おはようじゃねーのかよ、と。

いや、基本的に私もあいつも普段からおはようとか言わないけど。

 

気怠そうに隣の座椅子に腰掛けて煙草に火を点ける。

更にテレビの電源を入れる。この人のテレビ好きは昔からで、

朝起きた瞬間から寝るが寝るまでテレビとお友達だ。

 

「コーヒー」

「自分で買ってくればいいんじゃないの」

「え、なんで」

 

なんで、はこっちの台詞じゃないですかね、奥さん。

四捨五入すればもう五十路になろうかという女が私を見ている。

 

結局そこから20分程攻防を繰り返し、痺れを切らした母親は

「もうっ!」とかなんとか言いながら自分でコンビニへ行った。

「もうっ!」とか23歳の私ですら口に出して言わないから。

 

とりあえずこのブログでは母親のことを牛と呼ぼうかしら。

 

 

そんな牛も午後から同僚の家族の葬式に出掛けて行ったため

そこで漸く携帯に手を伸ばす。某メッセンジャーツールを開くと

森田から30分前にメッセージが届いていた。デートの誘いか?

 

「スゲー尿意で目が覚めた!!!」

 

 

昨日は自宅で一人、劇場版あの花を観て静かに泣きました。