対人関係というのには必ず優劣がある。

 

 

 

暑い、ただただ暑い。

 

髪の毛が所謂下乳(ないけど)の辺りまで伸びているせいで

心地良い風が吹いても髪の毛がリップを塗った口唇にべったあああああと

引っ付いて何とも気持ち悪いし、皮脂で化粧が浮いてテッカテカだし、

漸く花粉によって強いられていたマスク生活から解放されたはずが

マスク生活の何倍も生きづらくなっているこの季節が非道く疎ましい。

 

太腿の内側やら二の腕やらを意識的に狙ってきているとしか思えない

一般的に蚊と呼ばれるフェチズムスターの種族にもほとほと困り果てた。

 

夏は比較的嫌いじゃないんだけどなあ…働くには向かない季節だ。

 

 

 

働く、といえば。

半年以上前のこの記事が今話題になっているのを見掛けたのだが。

http://anond.hatelabo.jp/20131204235901

 

 

思い返すこと数年前、私が17になったばかりの頃だっただろうか。

コールセンターとまでは呼ばないが、職種としてはこの方が言うのと

似たような職種の現場に派遣され、結果的に2年程そこに勤めていた。

 

食品配達業者で、顧客からの電話対応や事務処理をしていたのだが

食品配達業という時点で察される通り、顧客層はほぼ二種類。

まず、主婦。これについては専業主婦に働く主婦、妊婦さんも含まれる。

そして、高齢者。ほとんどの顧客がこのどちらかに該当していた。

 

基本的なマニュアルとしては、電話で食品配達の注文を受けることが

メインだと教えられていたのだが、これがそもそもの間違い。

実際電話に出てみるとその殆どが商品や配達員に対してのクレーム

もしくは、こちらへ無理難題を押し付けようとするものばかりだった。

 

顧客層から考えても、そうなるのは周知の事実とも言えるのだが

当時弱冠17歳、単位制高校を卒業した直後で、アルバイト経験のみ。

そんな世の中の黒い部分を知り切れていない身には分かるはずもなく。

 

ただでさえ理不尽なことが嫌いで、納得の行かない限りは他人に

頭を下げることすら拒むような生き方をして17年を過ごしてきた人間が

学生生活を終えたばかりで放り込まれるべき場所ではなかった。

自分でそう実感したのは、19歳で今の職場に移された後のことだった。

 

 

「頼んだ覚えのないものばかりが届いている」と言われ、平謝りしつつ

原因を調べると、本人が見ていた商品カタログが全く違う週のカタログで

注文番号の全てが相違していた、なんてことはもう日常茶飯事。

それを「必要ないから全て返品したい」と言われるのも毎回のこと。

 

個人的な考えとしては、その言い分は明らかにおかしいと思うのだが

(一度買って手元に届いた食品を、返すから取りに来いと言うのだから)

顧客の信頼と満足を得る為には致し方がない。そう教えられていた為に

その申し出を受け入れ、わざわざ配達員が商品を回収に行くことになる。

 

人によっては「これから出かけるから」「冷蔵庫に入らないから」と

食品を届いたときの発泡スチロールに入れ、溶け掛けの保冷剤とともに

玄関先に放り出してあったりするらしいのだ。これには笑うしかない。

 

自分が不要と判断すれば、そっくりそのままゴミ同然に扱われる。

その返品された食品を別の人に売り歩くわけにも行かず、配達員は

事務所へと持ち帰ってくる。で、職員に声を掛けて皆でそれを買い取る。

 

だが、例えば顧客は「アイスクリーム」が届くつもりで頼んだものが

その週には「高級瓶入り牛乳」として届いていたりするもんで、

更にはその数量が15点だったとき、それとほぼ同数しか居ない事務所の

空気が一気に重くなったりするのは至極当たり前のことと言えるだろう。

つまりは「皆で1本ずつ買う」という暗黙の了解が生じてしまうのだ。

 

 

すっかり話が逸れてしまった。

 

他にも、卵が割れていたから新しいのを持ってこいと言われて

持って行ってもその割れてしまったという卵は返して貰えなかったり

配達日から数日経って頼んだ商品が入っていなかったから返金しろと

しょっちゅう同じ人から電話が掛かってきていたり……

グレーゾーンと呼ぶに相応しいクレームだらけだった気がするのだが

そういう相手に限ってどうにも「怒り心頭」な様子で掛けてくるのだ。

 

何というか、明らかにこちらのミスで生じたような問題でも

申し訳なさそうな声色で電話を掛けてくる人も居たし

特有の笑い声を上げながら「やーもうごめんなさいねー」なんて

返品を強請ってく…ゴホン、そんなおばちゃんも居たのだが

理不尽だな、と思うクレームのときほど理不尽に怒鳴られた記憶がある。

 

私には理解らない様なストレスを抱えながら家に帰ってきて

そんな中で更なるイライラの原因になってしまったのかもしれない。

 

しかしながら、顔が見えないというのは本当に恐ろしいもので

自分の子供や孫と変わらない年齢の相手に向かって、金切り声で

「こんなことが続くならもう頼まないわよ!」と怒鳴り散らすのだ。

社会人として、会社側として、電話を受けているのだから

こちらとしても別段甘やかして欲しかった訳ではないのだけれど

心に余裕がないのは悲しいことだな、と思って私は少し哀れんでいたし

娘や孫くらいの年頃の娘に哀れまれるというのも、また悲しいことだ。

 

 

結局そういう悪印象なものほどどうしても取り立てて話しやすいのだが

中にはお話し好きなおばあちゃんも居て、そんなおばあちゃんは

決まって配達が済んだ後に電話を掛けてきてはすごく楽しそうに

先週頼んだあのお菓子はすごく美味しかったのよ~とか

今週のレタスは少し傷んでいたわね、とか話してくれるのだが

これが返品だとか取り寄せだとかそういう要望に繋がることもないまま

一時間から二時間ほどずっと聞いていなければならなかったりもした。

 

私自身、自分の祖母と話したりする機会もほとんどなかったので

割と楽しかった気もするが、名指しで電話を繋がれるのはつらかった。

 

 

そんなこんなで2年間。

 

知らない誰かが、私とは全く関係のないことで、私に向かって怒る。

これは苦痛でしかないと思っていたし、謝ることも嫌で堪らなかった。

 

 

しかし、今考えてみれば私は優位な立場に居たと思うのだ。

 

パソコンで顧客番号を入力してしまえば、その顧客のフルネームや

電話番号、住所、生年月日や更には家族構成まで出て来る。

そして、その顧客が過去にどんな物を注文していたのかまで分かる。

それというのは、如何に恐ろしいことなのだろうか。

 

 

私はそこで過ごした二年間を時折思い返しては

なるべくなら苦情など言わずに生きていたいと思うし、

それが無理でもメールで済ませたい、とも思って生きている。

 

 

 

それにしても、今日は暑すぎる。

気象庁に苦情の電話を入れれば、少しはマシになるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

夏がそこまで迫って来ているようだ。

 

 

気付いたら、最後に更新した日から2ヶ月が経過していた。

 

いや、書きたいことはたくさんあったし毎日このページも覗いてた。

でもどうしても思い浮かばなかった。タイトルが。

 

そんなこんなで打ってる今もまだタイトルは浮かんでない。

とりあえず文章から書いてみるか、と小気味良くキーボードを叩く。

 

 

先日、大叔父さんの息子(何て呼ぶのか調べたら従叔父って書いてた)の

結婚式があり、うちのポンコツ母上とともに参加してきたのだが

何しろ私はろくに友達も居ないもんで、人生初の結婚式参加だった。

 

正直、常々金欠発症中の私としては飛び上がる程は喜ばしくなかったし

長時間拘束されるのが好きではないことから気乗りもしていなかったが

そんな心情を察した様で、私の身体は前日の朝から気怠さに包まれており

仕事を終えて帰宅する頃には目眩と吐き気で大変なことになっていた。

 

熱は38度を超え、節々も痛む。

母上と変な飼い犬に、延々「身体が痛い…身体が…」と訴え続けた。

数日前までゲホゲホと大袈裟な咳をして菌を撒き散らしていた母から

菌を受け継いだことは間違いないので、取り急ぎ母の貰った処方薬を強奪。

もうこの時点で22時を回っていたので医者にかかるという選択肢はなかった。

 

風呂に入って全身の毛を根気よく剃らなければドレスを着られないのに

風呂に入るどころじゃないし、明朝体調が回復している自信もなかったが

とりあえず朝4時半に目覚ましをセットして、とにかく寝ることに。

 

 

翌朝起きると、熱は36.2度まで下がっていたので慌てて身支度を始める。

声は寝起きのニューハーフみたいだったし顔も疲労困憊状態だったが

何とか時間に間に合った。…まあちょっと肘の周りとかに毛残ってたけど。

 

 

車で片道一時間半かけて訪れた式場は、小さかったが良い所だった。

海をバックに結婚式挙げるとか、海外でしか出来ないと思ってたし。

え?たまに漁船が横切って行くのが見えた?ああ、別に気にしてないから。

 

新郎側での参加だった為、私はずーっと再従妹の遊び相手をしながら

至極大人しく参加してたんだけど、ブーケトスでブーケを掻っ攫ったのが

うちの親族で、尚且つバツイチ子持ちの人だったのには鼻水吹いた。

ああいうのって新婦の友人が取るものなんだと思ってたんだよ、私。

やっぱり人間界も弱肉強食なんだよなあ……と目を細めた瞬間だった。

 

 

人生の一大イベントに参加したことで、色々と思うところがあった。

そんな中で最も大きな感情が「結婚式してえ」であることは言わずもがな。

 

この数年、結婚なんてものには縁がないし、もし奇跡的に何処かの殿方に

貰われる様なことがあっても別に誰かに披露する必要はない、なんて

そんな枯れて悟りきった考えを持って過ごしてきたはずなのに、

何でああいう場に実際参加するだけでその思いが覆ってしまうのか。

式場とプランナーの策略にまんまとハメられた訳か… と。脱帽。

 

まあ、三日寝たらそんな思いも何処かに消え去っていたのだが。

 

 

色恋云々言う暇はなく、この度漸く転職(する決意)をすることになった。

新しい仕事は既に決まっている、わけもなく。

出来ることならひと夏ゆっくり休みたいなあ、と思いながらも

家の中でまた新たな問題が発生したのでどうにか次を見付けなければ。

 

資産家の所に永久就職出来ないかなあ、と考えるよりは

どうにか自分が資産家になれないかなあ、と考える。初夏ですね。

 

 

 

 

心頭を滅却すれば、うんたらかんたら。

 

 

昼休みに携帯が鳴った。友人、咲子からだ。

内容としてはたわいない愚痴だったのだが、その愚痴の始発点が凄かった。

 

 

「彼氏のキスが気持ち悪い」

 

 

突然何を言い出すのかと思えば咲子さん。

あなた、言うに事欠いて「彼氏のキスが気持ち悪い」ですって!?

それについて何故この貴重なお昼休みの時間に、そして何故わざわざ

この私を相手取って訴えてきたのか、理由があるなら聞かせて貰おうか。

 

「いきなり何だ、どうした」

「最近妙にベタベタしてくるし自己満な感じするしとにかく気持ち悪い」

 

あ、そういう男性の兆候?みたいなの、私聞いたことあるぞ。

 

「それって」

「うんそうだよね絶対浮気してるよねあいつシネバイイノニ」

 

私何も言ってない。

少なくとも、まだ、何も言ってなかったと思う。

咲子は息継ぎもなくシネバイイノニまで言い切ってから、続ける。

 

 

「そんな奴とキスするの気持ち悪い」

「猫撫で声で甘えてくるのとかもう寒気しかしない」

「ウチに来て同じベッドに入られるのとか苦痛」

 

多分もっと過激というか、人格を疑う様な単語も聞こえてきた気がする。

 

でも、咲子は数々の暴言を吐くのと全く同じトーンのままで

「それでも別れたいと思えないからむかつく!」とも言っていた。

あと3秒遅かったら「別れれば良いじゃん」とか言ってた、危なかった。

 

たまーに相槌を打ちながら、ほとんど聞いてただけだったのだけれど

特にそれに怒るわけでもなく一頻り騒ぎ立てた後で咲子は

「やば、休憩終わってる!また掛ける!」と電話を切りやがった。

 

 

……何かあれっすね、女心っつーのはすごく難しいんすね。

 

突然キスが気持ち悪いなんて言うもんだから私はてっきり

何か舌の粘度の問題とか歯列の問題とかそういうもんなのかと思って

どんな返事をすべきか一瞬悩んだんだけど、そんな必要なかった。

 

彼氏のキスが気持ち悪い、やだ!とか私も言ってみてーわ。

こちとら気持ち悪いキスどころかただのキスすらままならねーわ。

 

 

 

あ、でもそういえば。

 

まだ辛うじて10代だった頃、ゲロまみれになるまで酔っ払った後輩に

(10代での飲酒は法律で禁止されています、絶対にやめましょう)

水飲ませてやったり背中さすってやったりして介抱してたら

「あ、先輩俺のこと好きなんだー。じゃあサービスね!」って言われて

思いっきり舌入れられて何回もキスされたっていう思い出ならある。

 

ゲロまみれの奴にキスされるとか、これぞ気持ち悪いキスだわ。

お前、そんなもんサービスのサの字もありゃしねえわ。

人生初のディープなチッスでドッキドッキしててゲロのこととか

全然気にならなかったけど、今考えればとんでもないことしてたわ。

 

それ以降、キスというキスをしていないのもまた事実であって。

私の最新キス事情はゲロまみれのキスということになるようだ。

 

 

「くそぅ、一足遅かったか。咲子め」

「あの方は何もしていないわ、ただ電話をくれただけ」

「いえ、奴はとんでもないものを呼び起こして行きました」

「……?」

「あなたのゲロまみれのキスの記憶です」

 

咲子よ、私の記憶を呼び覚ましてくれてどうもありがとう。

 

 

 

 

 

 

   

 

逃げることが最良の道、なのだと。

 

 

悩んでいた。

この一週間、ただただ下らないことで。

 

アルバイトをしていた学生時代ならば、悩むこともなく

「飽きたから別のバイトを始めよう」程度で鞍替えしていた。

でも社会に出ると、一度引いてしまったレールの上から退くことは

まさに、生きるか死ぬかの争いにまでなってしまうのだ。

 

まあ、要するに。

転職を、考えているわけで。

 

派遣社員なんて辞めたい時に辞められるからラクで良いよね~なんて

過去に言われたことがあったりするのだが、実際はそうでもない。

 

人間としてある程度の責任感や罪悪感を持ち合わせた者であれば

正社員だろうが派遣社員だろうがパートだろうが非常勤パンダだろうが

辞める、という言葉を口にするのは至極勇気がいるものなのだ。

 

生き方を何処かで間違えたであろう私は、根っからの負けず嫌い。

辞めるというのは逃げることで、逃げるということは

その勝負に負けたことを表す様な気がして嫌で堪らないのだ。

 

大抵の人は多分此処で「何言ってんのコイツ馬鹿じゃね?」となる。

というか私も「何言ってんのコイツ馬鹿じゃね?」って思う。

反面、何となく「背中の傷は剣士の恥だ…!」くらいのことも思ってる。

 

「へっへーん、逃げるが勝ちだぜ!」みたいな奴の方が

無駄な傷を負わずに済むと思うし、実際賢いんじゃないかと思う。

 

でもまあ残念ながら私はというと「自分、不器用ですから」な人間なのだ。

 

辞めますって言えないだけのティキンハートの方がまだ可愛いよね。

私なんて「もうこんな会社辞めてやる!何なんだこの会社!」とか

日々課長に暴言吐きまくって過ごしてるメタルハートの持ち主だから。

 

辞める辞める詐欺もこの数年で幾度となく繰り返した。

今までは正直、本気で辞めようとか多分あんま思ってなかった。

だって辞めるってなると新しく入る子に仕事引き継がなきゃでしょ?

他人に教えることが何よりも苦手な私としては、引き継ぎよりも

自分がイライラしながら仕事してる方が遥かにラクだったんだ、うん。

 

でももう私も今年で齢23になろうかというのだ。

これ以上このキノコが生えてきそうなジメジメした場所に居たら

転職期も結婚適齢期も一切合切逃してしまう、間違いない。

 

今しかねえと思うわけですよ、割とマジで。

 

6年間ずーっと事務仕事やってきて今更何言ってんだって感じだけど

出来ることなら営業職とかやりたいんだよ、自分の頑張り次第で

給料ブチ上がっちゃうぜ!?でも出来なきゃ雀の涙だぜ!?みたいな。

常にストレスとプレッシャーに囲まれてる様なそういう仕事がしたい。

 

自分を追い込んで追い込んで追い込みまくってヤケクソになりながらも

ワシはこんな所で終わる女じゃねえええええ!!!って成績上げたい。

 

……ドが付くSなんすよね。自分に厳しく他人にも厳しい。

ん?こういうの逆にドMって言う?まあ、どっちでも良いけど。

 

何にしても、それくらいやり甲斐持ってストイックに仕事したい。

このままだと恋愛とか結婚とかそういう脇道に逸れる様な心配もなく

ただ歳を重ねて行くだけだから、仕事くらい生き甲斐にしたい。

 

 

友人に言われた。

逃げることが最良の道っていうときだってあるんだよ、と。

頑張りすぎる人間ほど逃げられるチャンスに我慢しちゃうんだよ、と。

 

 

22歳の間に転職したいっす、がんばるっす。

 

 

 

 

 

 

 

相性なんて業務には関係がない。

 

 

先月から、職場に新人が入った。

 

鬼気迫る(および危機迫る)経営状態の中で、新卒正社員を雇う余裕が

あるわけもなく、私と同じ派遣社員の扱いとしてやってきたのだが

先月の入社時には、彼女はまだ私立高校に通う現役の高校生だった。

 

数年前から勤務していた別課の女性社員が妊娠し、今年度の末で

退職することになった為、新たな人材を確保する運びとなるのも当然。

しかし、この御時世。今後も長く働いて貰う予定だとはいえ

会社としては「ま、まあ…とりあえず、今回も派遣で」という感じ。

 

まあ、ここまではうちのテンプレ通りと言うべきか。

 

 

この高校生、見ればシャキッと背筋も伸びているし

聞かれたことには「ハイ!」と元気よく返事をする、髪も黒い。

だらけきった小汚い(ほぼ金色に近い)茶髪を振り乱しながら

「んー…忙しいんで、後でやります」とか踏ん反り返ってる様な

どっかの22歳女子派遣社員(彼氏居ない歴5年)とは出来が違いそうだ。

 

派遣会社社長からのお墨付きもあり、日もあまりなかったため

即日採用となったわけだが……聞いてびっくり、この彼女。

アルバイト可の高校に通っており、部活もしていなかったのに

アルバイト?なにそれ、美味しいの?ウマー??状態だったのだ。

 

義務教育期間を経て、高校で3年間を過ごし、仮卒状態。

 

一般教養というものは、一体何処で学んでくるべきなのか?

入社1ヶ月にして、最大の壁にぶつかった。(主に私が)

 

 

例えば、昼休憩の時間に私が彼女の後から休憩室に入る。

このとき私は「おつかれさまで~す」と入っていくわけだが

ごく一般的なこの場合の対応というのは、どの様なものだろう。

「あ、お疲れ様です…」例え声が小さかろうが、上擦っていようが

狭い休憩室の中に2人なのだから何の問題もないはずで。

 

そんな中、彼女はというと。

 

「(肉まん片手にスキップしつつ)おつかれさまで~す!」

「…………」

此方を向くこともなく、完全なる無視を決め込んでターンエンド。

 

今時の10代なんて(そうじゃない10代の方々ごめんなさい)

疲れてなくてもおつかれ~!って言うんじゃねえの!?違う!?

相手がどんなにブスだろうが気持ち悪かろうが臭かろうが

生理的嫌悪感を抱く相手だとしても!それでも自分より先輩に

声掛けられてんだから多少の返事くらいあっても良いでしょうが。

 

 

更に、例えば。

電車通勤の彼女が慌てているのを見兼ねてたまに送って帰って

あげることがあったりするわけだが、そんな時はどうよ?

 

「今日私も早く上がれそうだから送って帰ったげるよ」

「あ、良いんですか?」

 

……う、うん。まあ、ここで日本人の侘び寂びについて

語った所で仕方ないし、とりあえずこれでターンエンドね?

 

寒いしコンビニ寄ってコーヒーでも買いましょうか、と。

 

「何飲む?好きなの選びなよ」

「あ、すいません…えっと、じゃあこれを……」

「ん。(会計済ませて)はい、どーぞ」

「すいません、奢って貰っちゃって~」

 

……いや、間違っちゃいねえよ?確かに奢ったさ。

でも、なんか違くね?そういうのってもっと別の言い回しゲフンゲフン。

うん、日本人の控えめな性格について語った所で仕方ないね。

 

 

他にも、私と妊婦な先輩が休憩室の片付けをしてる最中に

「お先に失礼します~」とか言いながらそそくさと帰って行ったり

あんまりお喋りするの好きじゃない?という問い掛けに対して

「あ、私話し掛けられたら喋るんですけど自分からはあんまり~」

とか何とか言ってのけたりするもんだから、待て待て、と。

 

かなり上から物を言うんだな、と。

私バカにされてるのかな、と。……いやはや、悲しくなった。

 

上下関係に五月蝿いと言われてしまえばそれまでだが

部活もしていないアルバイト経験もない高校生というのが全員

此処まで酷いのか?と問われると些か疑問に思う部分であって。

 

それでいて、仕事もからっきし出来ない。

ついこないだまで高校生だったから、とか18歳だから、とか

そういう点を踏まえて甘く見積もってみても、出来ていない。

 

そこはね、私も普段からたらたら仕事してるし

目に見えてやる気ないし、デキる女とは程遠い位置に居ますよ?

それでも入社当時から、最低限のことは最短でやれたものだ。

 

自分は15歳でアルバイトを始め、17歳で派遣社員となった身。

彼女の気持ちなんて理解ってやれないし、理解ろうとも思えない。

派遣社員は、使えない人材だとバレれば何時でもクビにされてしまう、

そんなリスクを背負っていることも彼女はきっと知らないのだから。

 

 

こんな文句を言ったところで、あの子には響かないし

こっちが真摯に説教して気不味い思いをしても、ものの数分したら

「来週公開の映画が~」なんて言い出す始末だから手に負えない。

 

真剣に転職を考えてもいるけれど、直ぐには出来そうもないし

どうにか上手くやって行く方法を見付けたい、そう思う夕暮れ時。

 

 

 

 

 

 

備えというのは難しいものだ。

 

 

残業続きで疲労度MAXだった。

昨日は夕飯も口にせず、風呂にも入らず、とにかく睡眠欲を盈たすため

帰宅したその足のままソファーに雪崩れ込んで寝た気がする。

 

さすがに、制服も脱がず風呂にも入らずだったので

ベッドに入るのは気が引けてその場所を選んだのだと思う、が。

 

昨日に戻れるなら脳を揺さぶり起こしてでも自分をベッドに寝かせる。

 

午前2時頃、ガタガタという大きな音とともに

身体が揺さぶられ、その直後、顔横に置いていた携帯から

けたたましい警報音が鳴り響いたことで飛び起きた。

 

「やべえ、揺れてる!うあああやべえええええええええ」

 

口からそんな言葉は出るものの、疲れた身体はそれに追い付かず

ただソファーに腰掛けながら、足許で爆睡したままの愛犬を眺めていた。

 

何分築年数の経過しきった団地造りの建物であるから、

ごく日常的に発生する震度2程度の地震でも、割と大きく揺れる。

今朝方の地震は震度4だか震度5弱だか、そのくらいだったため

愛犬を眺めながら口先だけで慌てている私の頭上に設置された

壁掛け時計が、文字通り脳天を直撃した。その音でやっと愛犬起床。

 

じんじんとした痛みに耐えながら、公共放送を確認。

同時に、青い鳥がさえずっているツールを開いてそちらも確認。

 

とりあえず目も覚めたし風呂に入りたかったんだけど

地震に慣れていない地域のため、余震や火災のことを考えると

もしこの後余震が来て、避難することになったときに

私は全裸で逃げることになるかもしれない……!とか怯えてるうちに

空が白んできて、結局そこから慌てて風呂へ駆け込んだわけだが。

 

 

備えあれば憂いなし、とは言うけれど。

やっぱりこういう災害的なものって、起きてみないと恐れない。

3年前の震災以降、関東在住者は震度4程度の地震であれば

割と落ち着いているなんて聞いたこともあって、正直それほど

大きな揺れじゃないのかもしれない、なんて思ってたりもした。

 

昨晩のあの揺れですら、暫く緊張して怯えてしまったのだから

震度7なんて、私には到底想像も出来ない。多分私の家全壊するわ。

なかなか実行は難しいとはいえ、少しは備えておかないと。

 

 

朝、窓から避難しようとして怪我をしたおっさんとか

慌てて階段から転げ落ちたおばあちゃんとかがニュースになってて

これはきっと、壁掛け時計で頭頂部を負傷した私が

けが人に含まれてもおかしくないんじゃないか?と思った。

 

 

 

 

 

腐っているから腐れ縁なのだ。

 

 

山上という友人がいる。

初めて会ったのは、10歳の秋だっただろうか。

 

それまで母一人子一人で暮らしてきて、まあこれから先も

ずっとそんな感じで暮らして行くんだろうな、と思っていたのだが

母親が当時務めていた飲み屋の客と何だかそういう関係になったらしく

お互いバツイチということからか、籍は入れずとも同居という

事実婚状態での義父一人母一人子一人の三人暮らしが始まることになった。

 

それと同時に、縁もゆかりも無い場所へ引っ越すことになり

人生で初めての「転校」というものを体験したわけなのだが、

全校生徒の人数は300人に満たず、同学年は自分を含めても48人。

1クラスが24人で漸く2組あるという、差し詰め小さな学校だった。

 

そんな小学校で同じクラスになった級友23人の中に

前述の山上も居たわけだが、今思い返してみても小学時代の彼は

少数精鋭の中ですらパッとしなかったし、寧ろ私の記憶では

周りのやんちゃな男にからかわれて耳まで真っ赤にしながら

くりくりした瞳に涙を溜めている様な駄目な男の子だったと思う。

 

幼少期というのは、走るのが速い男の子が何故かモテる。

多分に、運動神経の良いちょっとやんちゃな感じのする男が

モテるというのはどの年代でも同じなのだろうが、学童期には

とにかく足の速い男の子がモテていた様な気がする。

 

山上も、走るのが速かった。

それでも女の子たちから見向きもされていなかったのは

あいつのスーパー人見知り属性の所為だということにしておくとして。

 

そんな、足が速くて顔もそんなに悪くないのにモテない山上は

隣のクラスの姫香ちゃんという子に長らく片想いをしていたらしく、

山上が男子連中に泣かされるのは決まって姫香ちゃんのことだった。

 

「なあ山上、お前姫香の何処が好きなんだよ?」

「べ、別に好きじゃねーし!」

「ウソつけ~!姫香呼んできてやるよ!」

 

廊下で大きな声で毎日こんなやり取りをするもんだから

姫香ちゃん本人も山上の気持ちを知っていたし、だからこそ

山上も恥ずかしくて悔しくて泣いていたんだと思うけど

若干小5のクソガキからしてみれば、格好の獲物でしかなかった。

 

小5男子なんてうんこちんこに毛が生えたくらいの話しかしないし、

小学校卒業間近の時期ですら、某アニメで女性パイロットの乳が

揺れるのを見ながら「見ろ!ブルンブルンしてるぞ!」とか

手振り付きで解説して興奮から鼻血吹いてたりしてたから、うん。

 

まあ、そんな柴田くんの話題はいずれ何処かでするとして。

 

 

当時の私は山上に一切興味がなかったし、

山上も多分姫香ちゃんのことしか頭になかったと思うけど

その山上が言うには、何度か一緒に遊んだりもしていたのだという。

……正直、知らない。多分山上の勝手な妄想。

 

ここまで話しておいて何だが、学生時代の山上に対しての印象は

「姫香ちゃんの名前が出るとすぐ泣く、逃げ足の速い男」というだけ。

中学でも一度同じクラスになったり、高校もすぐ隣の学校だったりしたし

何らかの接点があっても良さそうなものだったのだが、それも皆無。

 

高校卒業後に偶然地域行事に居合わせ、言葉を交わすまでは

お互いの携帯番号やメールアドレスなんてものも知らなかったのだが

そこから暫く、一週間のうち2~3日は一緒に過ごしていた気がする。

 

 

今でこそチャラチャラしていて女の子大好きな山上も

まだその頃は清い奴で、歴代彼女も経験人数もたった1人だった。

女友達を紹介してやって飯会を開いても、人見知り発動で

最後の最後まで相槌しか打たない様な扱いづらい奴だった。

 

そのくせ口だけは達者で、二人で居るときには

「こんな女の子と付き合いたい」だの「こういう男になる」だの

大口を叩いてみたり。まあ、其処に関しては未だに変わってない。

 

 

20歳の夏、そんな山上を好きになった。

きっかけというきっかけがあったわけではないのだけれど

3人目の女友達を山上に紹介した日、その友人からたった一言

「佐伯の好きな男盗ったりする趣味ないけど」と言われてしまう。

 

あーそうなのか、私は山上のことが好きなのか、と。

 

確証も実感もないまま始まった恋だったが、山上が新しい彼女との

プリクラを見せ付けてきた日には部屋に籠もって泣いたし

彼女と上手く行っていないと相談されれば、別れろと願いながらも

真っ直ぐにアドバイスし、その後仲直りの報告を聞いてまた泣いた。

 

「私、女だけど、結婚式には呼んでよ。山上のこと大好きなんだから」

 

当時の私の精一杯の告白に、山上は「おう!」と笑って言った。

 

山上の歴代彼女の名前や経験人数が増えていくに連れ、

私の山上を恋い慕う気持ちも次第に冷めて行ったのだけれど

何だかんだ言ってもう家族みたいなもんで、

いつか山上が今のチャラチャラした女遊びをやめて

本当に好きな人と結婚するときには、誰よりも祝福してやりたい。

 

 

そんな友人、山上から先ほど届いたメッセージには

「暇なんで女の子紹介してください!」と書いてあった。

 

 

………………前言撤回、山上なんて不幸になってしまえ。